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――皆さんは死にそうな目に遭ったことはありますか?
私はあります。というか今です。
「はぁ、はぁ・・・・・・!」
もしこの世に神様がいるのなら、盛大な文句を小一時間ほどぶつけてやりたいです。いえ、文句だけではすみませんね。いろんなところに十円禿を作ってやりましょうか。
先ほどから休む暇もなく殺されそうになっているのは何なんでしょうか。普段の行いが悪かったのでしょうか? 師匠から施されたあまりにも過酷な修行の腹いせに悪戯をしたのがいけなかったのでしょうか?
やはり……食事にひたすら師匠の嫌いなものを一月ほど出し続けたからでしょうか。それともこっそりエアコンの冷房を暖房に変えたりしたからでしょうか。何回か。
だめですね、心当たりが多すぎて絞り切れない……!
殺されかけたものの例としては道路に飛び出してしまった男の子を助ける際、私の方が車に轢かれそうになりました。三回ほど。
しかも揃いも揃って制限速度三十キロオーバー。乗用車から始まり、バイクやトラックまで。確実に私を殺そうとしていましたね。
そんな危機的状況を見事に潜り抜けた私を待っていたのは通り魔でした。昼間にも関わらず、ナイフで刺そうと突撃してきました。
ターゲットは完全に私。居候している剣術道場で師匠から教えていただいた、対ナイフ用徒手格闘術を駆使して通り魔を地に叩き潰しました。
走りよってきた警察。どうやら通り魔を追い詰めたら逃げられそれを追いかけてきたようで。
その際、通り魔用に構えていた拳銃が暴発して、弾丸が空気を切り裂きながら私の心の臓目掛けて飛んできたのは余談です。
・・・・・・・・・・・・もちろん避けましたよ? 私をあまりにも正確に狙ってきていたので何とか回避に成功しました。警戒をしていつでもよけれる体勢でいたのが功を奏したということですね。流石は私。
面倒事は嫌いだったので、拳銃の暴発に皆さんの目が奪われている時に立ち去りました。これぞ正真正銘のミスディレクションですね。
立ち去ったまでは良かったのですが、建設中のビルの前を通ったのがいけなかったのでしょうか? すごく大きな鉄骨が二本落ちてきたのです。
師匠の教え、『何時何時人は生命の危機に陥るかは誰にもわからない。だから常日頃から周囲に気を配り、何時でも回避出来るようにしておけ』というのを忠実に実行していた甲斐がありました。
その時ばかりは危かったですからね。反応がコンマ数秒遅れていたら、今頃グチャグチャで目も当てられない惨状になっていましたから。
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