風の貴族になりまして

幼女時代

この眩しいくらいの笑顔。眩しいけれど、とっても温かくて温かくて、そして暖かい。

「ふふ･･････」

「む、何がおもしろいんだ？」

思わず笑みが溢れてしまいます。

「いえ、何でもありませんよ。何でも」

――私は師匠以外の家族を知りません。しかし師匠との生活は一般的な家庭とは全然違うものだったでしょう。

だからこうして異世界に転生して両親や兄、そして妹がいる。家族がいる。師匠には申し訳ないのですが、残念ながら私はこう感じてしまうのです。

嗚呼、家族とはこんなにも温かいものなのか、と。

師匠との生活に不満は一切ありませんでした。それは時が経った今でも変わらずに思っています。しかし心の奥底では家族というものに憧れを抱いていたのかもしれません。

まるで夢のようです。

ですが現実です。夢とは違い、失う時はいずれやって来ます。夢から覚めるのは一瞬です。別れの時が来るのは自明の理。

本当に大切なものは、人は失ったときに初めて大切さに気づく。

私が師匠のことで大いに後悔したときのような想いは、二度と味わいたくはありません。

別れの時が来たとき、皆が笑ってお別れが言えるような生き方を、これからはしていきましょう。

――もし私が死んだとき、どれほどの方が悲しんでくれるでしょう？

もし家族が死んだとき、私はどれほど悲しむのでしょう？

出会いと別れは避けることの出来ない運命。この表裏一体の関係が存在する理の中で生きる私たちは、どのように生きるべきなのでしょう？

一度、命を失った私にも分かりません。

では私が死んだとき、良い人生を送ることが出来たと思える生き方をしましょう。

――目の前の幸せを大切に･･････。