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なので私の持ち物は栄養満点の食料(味は保証しない)、栄養満点の薬を溶かした水(味は保証以下同文)、多種多様な薬(味は以下同文)。
完璧です。
「では行きますよ、フーリン」
「畏まりました」
フーリンに荷物を持たせ、正門へ向かう。本当は私が持っていっても良いのですが・・・・・・。現時点において、フーリンはメイド見習いという扱いとなっています。そのためにさせるべき仕事はさせなければならないので致し方ありません。
「ユリシア様、こちらが梨農園の報告書です。ご確認を」
廊下を歩いている途中、メイド長が数枚の報告書を手渡してきたので受けとり、歩きながら目を通します。メイド長は一歩下がり、私たちと歩調を合わせます。
――梨農園。それは私が責任者となって進行させている事業です。
梨は私が最も好きな食べ物であると断言します。愛してると言っても過言ではありません。
始まりはそう、私がまだ地球にいた頃に遡ります。回想シーンと呼ばれるやつですね。中途半端に長い話ですがお付き合いください。
ホームレス小学生から暴力による強制脱却をさせられた日、師匠はあまり世間を知らなかった子供の私でさえ分かるほど、ひどい手料理を振る舞ってくれました。
白米はお粥すら通り越したベチョベチョ具合。炭としか見えない丸焦げの魚(もはや魚の種類が分からなかった)。ドロドロに溶けかけているおひたしらしき野菜のようなもの。塩。
塩のみがまともでした。
それらの料理? を水でなんとか流し込んだ後、デザートということで出してくれたのが梨でした。
いくつかに切られていたのですが、全て不恰好で痛んでいたところを切り落とした結果ですか? と聞きたくなるくらい大きさも形もバラバラでした。
しかし何も言えなかったのです。だって師匠の手は絆創膏だらけだったのですから。
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