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「私には親がいない」
「それは今貴様がホームレスでいる理由にならない」
「・・・・・・・・・・・・」
「どうした? 急に黙り込んで。そうかネタが切れたということか」
なるほど、と勝手に納得するこの人に言いようのない怒りを覚えました。
「・・・・・・さい」
「まったく、この年で悲劇のヒロイン気取りだとはな。まったく、恐れ入る」
「・・・・・・うるさい」
「どうせ貴様がこのままホームレスを続けても何も変わらない、無駄に働く年不相応な貴様の脳ミソではとっくに理解しているのだろう?」
「うるさい!」
「貴様は助けて欲しいだけだ、そうなのだろう?」
「黙れぇぇぇっ!!」
私は飛びかかりました。普通の人間ならば避けるか否か、そんなところですが、生憎私の師匠は普通ではありません。断言します、異常です。何故なら――
「ガハッ!」
飛びかかった私の右腕、肩の付近の袖を掴みました。そして私の体を背負うように身体を動かしました。
一本背負い。
まさかまさかです、小学一年生相手に柔道の技をかけたのです。
受け身なんてとれるハズもなく、したたか地面に打ち付けられました。肺から強制的に空気が追い出される。
さらに、私の師匠はその程度では終わりません。
倒れ悶えている私の鳩尾に容赦のない一撃を食らわせたのです。そこで意識を失いました。
その後、師匠の家で目を覚まし錯乱した私を幾度も力で叩き伏せて、私に幾度も言葉を投げ掛けました。
始めは怒りで聞こうとはしませんでしたが、いつしか怒りは薄れ何故か格闘術を教わっていました。
何があったのでしょうか。言葉はどこに行ってしまったのでしょうか?
ま、まあ! 何はともあれ私は師匠に救われたのです! 私を養子のような扱いで育ててくれました。
私に生きて、自分自身を変えるきっかけを与えてくれたのです。
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