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夏帆の母親は、拍子抜けする程あっさりと、夫の殺害を依頼した事を認めた。実際に手を下した訳ではないので、そこまでの重い罪には問われないだろうと考えているのかも知れない。何よりも、一般人が殺人に関わる事等、普通の生活の中では皆無に等しい。それなのに、現実に目の前で人が死んだのだ。その重圧が非常に大きくなるだろう事は、想像に難くない。
「毎晩、夢を見るんです。夫が苦しそうな顔で、私に助けを求めるように手を伸ばしてくる夢。でも夫の身体は、暗闇の中でぼんやりと浮かびながら、灰になって崩れて……」
母親のその独白が、実際にかなりの重圧を抱えている事を証明していた。
「ところでそのサイトは今、アクセス出来ますか?」
「いえ、依頼が終わった後に見たら消えていて、探してもどこにもありませんでした」
「最初は何と検索したんですか? 依頼殺人?」
「それが……いつもの通販サイトにアクセスした筈なのに、そのサイトが表示されて」
当然気持ち悪く感じたが、夫との仲が最悪なまでに拗れ、殺意まで抱くようになっていた彼女は、冗談半分で依頼ページに書き込みをした。何よりも、『後片付けはセルフだけど、そんなに時間は取らせません』と、まるで夜中のテレビショッピングのような言葉に惹かれたというのもあったのだと言う。
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