MadDog

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「それを発見したのは、本当に偶然でした。見た事もない物質。私は夢中になりましたね」 光姫は嬉しそうに話し始めた。 「恐らく幹細胞の突然変異だと思います。遺伝子に対して酷く攻撃的な物質で、でも酷く不安定で。安定させるのに苦労しましたよ」 そこで光姫はコーヒーを口に含み、カフェインが体内を廻るのを待つかのように眼を瞑る。次に開かれた瞳には、何処か常人とは違う、狂気とも取れる色が見え隠れしていた。水居は不安を感じたが、それよりも好奇心が勝り、光姫の次の言葉を待った。 「私はこの物質に、遺伝子に猛攻撃を仕掛ける物質という意味で、MASSIVE DRIVE on GENE、MDOG(マッドドッグ)と名付けました。単純でしょう? でもそれくらいの方が、強く印象に残るんですよ」 雄弁に、誇らしげに話す光姫は、次第に恍惚とした表情になっていく。水居はその様子に恐怖を覚えた。そんな水居の様子に気を留める事なく、光姫はポケットからタブレットを取り出すと、操作を始めた。
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