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「……所長、携帯替えたんですか?」
光姫の携帯は白いスマホで、カバーも何も付けていないとてもシンプルなものだった。今、光姫が持っているのは、それより一回り大きい、真っ黒なものなのだ。
しかし水居の質問に答えは返ってこない。
「そのMDOGにはどんな効果があるんですか?」
水居は質問を変える。その時、彼の胸元から音が聞こえてきた。そこには水居のスマホが収まっており、彼はそれを取り出すと画面を開く。一瞬間、彼の動きが止まるが、頭を捻りながら、スマホを元の場所に戻した。
「さっきも言った通り、遺伝子に強い攻撃を与えるんです。それも、遺伝子をバラバラにしてしまう程の攻撃です。そして一旦攻撃が始まると、攻撃対象である遺伝子が全てなくなるまで止まらない」
しかし、光姫の話を水居は聞いてはいないようだった。彼は身体中を掻き毟り、その表情は苦悶に満ちている。
「人体の自然発火現象、知ってますよね? 私はその因子たる物質だと考えています。攻撃された遺伝子が崩壊する際に出るエネルギー、それは核分裂の際に出るエネルギーに匹敵するものです。ただ、人体という名の原子炉によって爆発には至らない。しかしその熱に耐えかねて人体が発火するんです」
水居の身体から、煙が立ち昇り始めていた。
「私はその物質の安定化に成功した。剰(あまつさ)え、それを操作する事にも成功したんです!」
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