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光姫はそれまでのクールな化学者の仮面を脱ぎ捨て、狂った瞳で水居を見つめている。その視線を自分の手元に落とすと、また口を開いた。
「このタブレットは私が作ったものなんですよ。だからと言って、他のものと遜色はない……いや、MDOGに信号を送る事が出来る分、高性能です。さっきの水居さんのスマホにも送りました……って、もう聞こえませんね」
光姫は、口元に薄く笑みを作る。その瞳に映る水居の身体は、青く燃えていた。そして呻き声の一つも上げる事なく、消し炭となって崩れ去っていった。
「ありがとう、君のお陰でこの研究の第一段階は完成したよ。さて……」
光姫は満足そうにそう言うと、研究室で使っている自身のパソコンのドライブからディスクを抜き取る。
次に、再びタブレットの操作を始めると、パソコンの画面には犬の頭蓋骨のように見える黒い影が映し出された。その後ろには沢山の数式や文字列が表示されるが、まるでその犬が食い散らかしていくかのように崩れていき、遂にはその犬も消えて、何も映さないモニターだけが、ぼんやりと薄い光を発していた。
そんな中、
「バイバイ、私」
そう呟くと、光姫は研究所を後にしたのだった。
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