第1章

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甘えん坊な声が、甦る。 細くやわらかな金の髪。林檎のような赤い頬。無垢に透き通る紫の瞳。 『ねぇねぇグラッセ。またあしたの朝もおこしにきてくれる?』 『勿論です、姫様』 『えへへ…ありがとう』 幼い王女にとって広すぎるベッドには、絵本や肌触りのいいぬいぐるみなどが置いてある。 王女は一日のほとんどをそのベッドの上で過ごしていた。 国王から監禁を命じられていて、部屋の外へ出られないからだった。 王女はとあるものの発生と同時に産まれたという理由だけで、血の通った父からも何年もずっと避けられ、気味悪がられていたのだ。 『私は何があっても姫様のお側におります。夢魔に囚われませんように、お守り致します』 『うんっ』 あの日。 まったく陽に焼けてない王女の白く細い小指と、グラッセの小指を絡めて、約束をした。 (だが力が無く、結局私は、姫様の約束よりも国王陛下からの命令を…) 「待ってよぉー!」 「はやくはやくー!」 グラッセのすぐ横を子ども達が元気にかけ抜けた。
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