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甘えん坊な声が、甦る。
細くやわらかな金の髪。林檎のような赤い頬。無垢に透き通る紫の瞳。
『ねぇねぇグラッセ。またあしたの朝もおこしにきてくれる?』
『勿論です、姫様』
『えへへ…ありがとう』
幼い王女にとって広すぎるベッドには、絵本や肌触りのいいぬいぐるみなどが置いてある。
王女は一日のほとんどをそのベッドの上で過ごしていた。
国王から監禁を命じられていて、部屋の外へ出られないからだった。
王女はとあるものの発生と同時に産まれたという理由だけで、血の通った父からも何年もずっと避けられ、気味悪がられていたのだ。
『私は何があっても姫様のお側におります。夢魔に囚われませんように、お守り致します』
『うんっ』
あの日。
まったく陽に焼けてない王女の白く細い小指と、グラッセの小指を絡めて、約束をした。
(だが力が無く、結局私は、姫様の約束よりも国王陛下からの命令を…)
「待ってよぉー!」
「はやくはやくー!」
グラッセのすぐ横を子ども達が元気にかけ抜けた。
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