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「そうだな、戦うのは久しぶりだ……ずっとお前の修行に付き合っていたからな。久々に体でも動かすか」
黒衣は誰にも気づかれないように小さく掌に魔力を集める。それを全身に血液を循環させるようにして体を温める。
これは纏と呼ばれる高等技術なのだが、簡単にやってのけてしまうあたり黒衣の強さを伺わせる。
体が解れてきたところでとても笑顔の似合う青年が黒衣のところにやってきた。
「君が入学テストを受けたいって青年かい?」
「ああ」
「これまた中々の魔力を持っているようだけど……隣のお嬢さんは君のパートナーかい?」
お嬢さんと呼ばれたことに少しばかりの苛立ちを覚えた少女だったが黒衣の話が進まないと思い、ここは静かに堪えた。
「……エヴァは俺のパートナーだが、何か問題でもあるのか?」
「いんや……彼女の方には何の問題もないよ。彼女は魔導師だよね……つまり君は守護者なわけ」
黒衣はこの男の言いたいことが少しばかり理解することが出来た。
「守護者だから戦うのは出来ないとでも……」
「そうじゃないよ、むしろ君は僕の予想を超える戦闘力をもっていそうだしね。ただそんな君がどうして守護者なんてものでとどまっているかってことが気になっただけだよ」
「御託はいい。入学テストを受けさせてくれるのか?もしかしてお前を倒せば終わりか」
青年は小さくため息をした。
「僕に戦闘力があるように見えるかい?見えるのだとしたら君はとんでもなく節穴なわけだけど」
それを聞いた黒衣は笑った。
(冗談なわけねえよな……そこまでの魔力を放ちながら)
「君の相手をするのは僕ではなく彼女だよ。生徒会特別顧問」
青年がそう紹介すると音もなく黒衣同様に黒いコートに身を包んだ女性が立っていた。その腰には刀のようなものが下げられ、纏う魔力から闇属性の使い手であろうことが分かった。
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