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『開始』
フィールドに響き渡る先ほどの青年の声で試合は始まった。先に行動を起こしたのはルカの方だった。
間合いに入ったわけでもないのにルカは躊躇いなど感じさせない抜刀を見せた。
───陰流、抜刀術一式。
綺麗な斬線を空に残し、斬撃は黒衣を襲う。
「……高速抜刀による真空状態から発せられる鎌鼬……見事」
黒衣はそれを驚きもせず、ここでようやく構えを取る。
「一応は俺も剣術士、剣の攻撃は剣で返すのが流儀」
──無刀流、楓。
魔力を纏わせただけの手刀。黒衣はそれでルカの一式を相殺。
「……ただの手刀ではありませんね。それに一式と同等の威力とは恐れ入れますね……こうなれば、名乗らせていただきます。ギルドナイツ、序列第七位『漆黒の剣士』ルカ・ダーククルム。全力を以ってお相手致します」
ギルドナイツ。
ギルド最強の15人の魔導師。その第七位。
「剣士ねぇ……名乗ったってことは正式に俺を倒すにくるってことか、面倒だ」
黒衣は左腕のボロ布に手を掛けようとしてそれを使うことを止めた。
「その左腕に何かあるのですか……」
「俺を本気にさせてくれるのなら……見せてやってもいいがな。生憎様、この布は特殊な封印を掛けてて簡単には取れない」
「なら仮面と一緒に破壊するまで」
───ダーククルム刀流、驟雨(しゅうう)。
この技は、刀を振りはしない。
その場から動くこともない。
ただ、剣戟の嵐が静かに訪れる。
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