プロローグ 第零章 「変革した世界」

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 そう言ったルカの瞳はどこか寂しそうだった。そして悲しそうでもあった。 「先の大戦の影響か……」 「ど、どうしてそれを知っているのですか。それはあの場にいた人間以外知らないはず」  おっと墓穴を掘ってしまったか。  黒衣はすぐに言い訳を考える。 「この左腕は記憶や精神に影響を及ぼすものを自動的にシャットアウトするんだよ。おそらく世界改変の影響もそれで俺には効いていない」  最初は焦ったものだとけらけらと笑った。  そしてすぐに意識を切り替える。 「戦闘に余計な感情は必要ない……」 「……空気が変わった。何かする気ですね」 「いや、何もしない」  黒衣は本当に何もせずただ茫然と宙吊りになった操り人形のように動くことを止めた。  ───神の審判(ジャッチメント)    黒衣の魔法はすでに発動しておりもう何もする必要がなかった。  故に脱力。  あらゆる法則は神の前においては無力。  神が法則なのだ。 ルカの放った抜刀術は“刀が抜かれることはなかった”。  黒衣が、アルト・アディンセルがかつて見せた過去改変。ありとあらゆる事象をなかったことにする。世界にそれは虚偽だと認めさせる魔法。  この魔法を一度使用するととてつもない脱力感に襲われるがアルトはそれを不快だと感じることはなかった。 「……理事長として黒衣さんの入学を特例として認めます。それでもいいですね、理事長代理兼生徒会長ハイセ・クレツ」 「ルカさんに匹敵する力を持つ人間なら大歓迎です」
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