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しかし、世界はいや、神って奴はどうしても俺に生きていて欲しかったのかどうかは不明だが俺は勇者タイスケ・サハシのいた世界で生きている。
こちらの世界に魔法という概念はない。
だからと言って文明が廃れているというわけでもない。
魔法の代わりに科学というものが発展して栄えている。
文明レベルも決して低くはない。
寧ろ高水準と言える。
幾千幾万とこの世界を見てきたがいつの時代も戦争というコミュニケーション手段がなくなることはない。
こちら側に来てもう随分なことになるがすでに大きな戦争を三度経験している。
ギルドのような場所がなく最初は仕事を探すのにも苦労したがそれなりに何とかなっていた。
こちら側で最初の方は学生生活なんてものも送ってみたが、あちらと比べて学習内容が高い。
正直なところ楽しかったとも言える。
それから数百年。
俺が変化するのを世界は拒否した。
老いることも死ぬこともない。
知っている人間が次々と死んでいく。
それはかなりつらかった。
何度も住んでいる場所と名前を変えた。
生きるということに苦労した。
そして俺の終着点は戦場だった。
結局、俺は戦うことを選んだのかもしれない。
火種となりそうな場所に俺はいた。
望んで戦うことを選んだわけではない、戦うしか許されなかった。
力があれば、人は利用する。
人望があれば、人は利用する。
才能があれば、人……。
俺は戦って戦って……元帥となった。
最初は嫉妬するような連中もいたが、今ではそんなものはいない。
「……い、……元帥」
隣に立つ少女が俺のことを呼んでいた。
「大丈夫ですか?何か考え事をしているようですけれど、あまり思いつめないでください。私や他の者を頼ってください。サポートぐらいは出来ますから」
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