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ありがとうと頭をなでてやると嬉しそうにこちらを見てくる。
まるで犬だ。
いや、ネコだろうか?
「そういえば、局長から用事があるって言われていたんだ……」
「局長からですか?」
少女は局長という言葉に明らかな嫌悪を示す。
「そんなに嫌いか?」
「嫌いです」
局長はとても厳しい人だ。勝利という言葉に陶酔し過ぎて勝利のためならどんな手段もいとわない。
結果重視の人間。
「呼ばれたのは俺であってお前ではない。だからそんな顔するなよ、将軍。可愛い顔が台無しだ」
「私を女扱いするのはあなただけですよ、元帥」
「はいはい」
将軍と呼ばれた少女は女扱いされることをひどく嫌う。
それは女だからと言って目の色を変化させるクズ共が嫌いだからということからきているようで、幼少時代、そういう目に合ったのだという。
そんな少女はともかく、俺は局長室へ向かう。
◇◇◇◇◇ 局長室前。
コンコン。
「失礼します」
黒いコートを纏った青年が大きな鉄の扉をノックする。
「よく来たね。アルト・アディンセル元帥」
「何の用でしょうか?こちらも多忙な身でして」
「ふぅ……」
青年の目の前の業務机に座っている陰険そうな眼鏡の男が小さくため息をついた。
こちらに向けてのものではない。
どうやら今、目を通している書類に何か嫌なものでも見つけたのかもしれない。
「用があるのは私ではない。彼女だ」
そう言って、応接用のソファに座っている女性を見る。
青年もそれに合わせてそちらを見た。
「久しいわね、アルト」
アルトと呼ばれた青年はひどく懐かしい気持ちにさせられた。
「覚えてないかしら?アルト・アディンセル。それともアウル・S・コルトハード……いえ、零の王でもいいわね」
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