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「儂も年かのう…」
初老の剣士、静哉が呟く。
住居は精霊大地と人間国の境の東の島国、東倭国。
漂流した1人の妖精を助け、送り届けたところ、森で暴れている1匹の魔物の討伐を頼まれる。
自身が極めた剣技‘山奥新陰流’を異国で試してみたい事もあり、依頼を引き受けた。
話に聞いた時はさほど離れてはいないだろうと高を括っていた…実際は歩いて1日はかかる程の距離、それを半日で移動したのだから年齢より体力はある事が伺える。
「奴か…」
殺気を感じ、即座に気配を消す…
『もう少し近付いて様子を見るかのう…』
「……」
サクヤはイライラしていた。
120年は生きた猫、自分の存在意義を求め只ひたすら本能に従い狩をした。
他の動物や魔物、妖精の声が理解出来た頃には森の厄介者扱いされていた。
猫又としての能力に目覚めた事がサクヤにストレスを与える事となり、
更に有無を言わさず討伐に来る妖精や人間がイライラを重ねさせていた。
「俺は食いたい物を狩り、食ってきただけだ…」
目の前にはウィンディアの傭兵達が息も絶え絶えで転がっていた…
「…人間は不味くて食えたもんじゃない…殺す気にもなんね―」
『ほう、只暴れている訳じゃなさそうだのう…』
「誰だ!」
身構えるサクヤ。
「いやいや、盗み見するつもりはなかったんだがのう!
お主が森の暴れん坊か?」
「…また、殺しに来たのか?!」
「いやいや~
只の爺にそんなに警戒せんでくれ」
「…只の爺がそんなに気配を隠したり出したりはしない!」
『ほう!野生の勘か?
消気配や殺気が判るか~』
「お主、儂の弟子にならぬか?
お主は剣客としての素質がある」
「ケンカク?そんな鉄の棒で何が出来る!」
猫又化により普通の猫の3~4倍の大きさからの爪撃は虎や獅子並みの威力で襲う。
ギィイン!
「なっ!」
「その鉄の棒も、使い方によっては!」
ドフ!
ン! バタ
「至高の武器になるんじゃ」
静哉は猫又を抱え上げ、その場から去った…
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