序・猫又討伐(誕生編)

3/4
前へ
/18ページ
次へ
「起きたか?夜叉猫坊」 四角い木で作られた空間の中、爺さんが声をかける。 「どうするきだ!」 今まで、狩ってきた物を食べてきた猫には、狩られたら「食われる」覚悟があった。 「言ったじゃろ、お主は剣客に向いておると。 儂の下で修行するんじゃよ。」 「シュギョウ?…俺は食われるんじゃないのか?」 ほお、野生のまま猫又になったのか、ならば… 「そうじゃのう… お主は儂に負けた。 つまり、一度死んだと言う訳じゃな。じゃあ、殺した儂が殺されたお主をどうしてもいい訳じゃ。」 「…ああ、やっぱり食うのか?」 「いや、今日…今からお主は儂の弟子じゃ。 この鉄の棒切れの使い方とその心得を学んでもらうぞ。」 「…わかった… 俺は負けたんだ、文句はない。 それで何をすればいい。」 「まずは名前を教えてもらおうかのう。 ちなみに儂は静哉じゃ。」 「…名前?猫又や人間じゃ駄目なのか?」 「…お主はまず学問・知識から身に付けんと駄目じゃな… いいか?猫や人間とはその種類の名前、総称じゃ。お主や儂の一個一個の呼び名じゃない。 同じ人間、同じ猫どうしでの区別の呼び名が名前。 儂とお主は同じ剣客じゃ。互いの呼び名を決めんと区別がつかん。」 「…わかった。 でも、名前はない。なかったから名前を付けてくれ。」 そうじゃのう… 「…咲哉(サクヤ)と言うのはどうじゃ?」 儂の一字に咲くを付けて咲哉。安易かのう… 「…わかった。俺は今日から咲哉だ。よろしく静哉。」 「こらこら、先生を呼び捨てはいかんぞ。 物事を教えてくれる先生にはのう、敬意を込めた呼称があるんじゃ! 今日から儂は咲哉の師匠じゃ、師匠と呼ぶのじゃ。」 「わかった、師匠!」 剣技を教えてやる前に一般常識を教えてやらんとな…
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加