序・猫又討伐(誕生編)

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その日から咲哉の修行が始まった。 「ほら、勘に頼るな、先を読め、何の為に道具を持っとる。」 容赦の無い剣撃、木刀とはいえどんどん青アザが増えていく咲哉。 「ガアァァ!面倒だ!」 左手の爪で木刀を斬りつけ、へし折ると右の木刀で突きを繰り出す。 「あまい!」 折れた木刀の柄で咲哉の木刀払い上げるとそのまま刀を突き付ける。 「折れた刀でも刺されば致命傷じゃぞ? 気を抜くな、咲哉。 ほら、次じゃ。」 このジジィのどこにこんな体力がある… もう半日近くケイコをしているが、全く疲れる気配が無い… 「何じゃ?もう降参か?しょうがないのう…飯にでもするか?」 「………」 咲哉はへとへとのまま狩りに行き、手頃な動物を狩り戻る。 「狩りは素早いようじゃのう… どれ、料理しながら講義してやるわい。」 生で食べるのに慣れている咲哉には『料理』に多少抵抗があった。 「咲哉、狩りの時は何を考えとる?」 「……特に考えてない。しいて言えばどれだけ効率的に獲物を捕れるか…」 「そうじゃ、狩りの時余計な事を考えておったら獲物に逃げられてしまうな。 剣技もそうじゃ、余計な事を考えておっては逆にやられてしまうわい。」 手際良く作られた料理をテーブルに運ぶ。 「わかったか?」 「…なんとなく。」 「今はそれでいい。 ささ、冷める前に食べようかのう。」 ついさっき捕って来たウサギ、毛と皮は取ってきたとはいえ、汁や焼き物…手際がいいにも程がある… 「何じゃ?食欲がないのか?」 「いや、師匠は料理も手際がいいんだなと思って。」 「はっはっはっ、そんな事か。 そりゃ咲哉が狩り行っとる間、肉以外の準備を終わっといたからのう。 何事も修行じゃ、参考になったか?」 「………」 ジジィの凄さが何となくわかった気がする…。 数日後、2人は静哉の故郷、東倭国へ発つのであった。
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