1.

2/12
前へ
/16ページ
次へ
 俺は宿舎の自室で本を読んでいた。  外は強い雨が降っていて、とても外出する気分にもなれなかったし、たまにはゆっくり一人の時間を過ごすのも良いかと思っていた。  読んでいた本はどんどんクライマックスに近づいていき、そろそろ犯人を追い詰めるという山場を迎えるというタイミングで誰かが部屋のドアを開けて入ってきたので、思わず本から顔を上げた。 「こんなに強く降るなんて思って無かったから、参ったよ」  文句を言いながら入ってきたのは、同室の親友だった。  参ったと言う割りには濡れていないので、傘は持っていたらしい。  そして俺に手にしていたコンビニのビニール袋を持ち上げて見せ、 「買ってきたんだ。少し飲もう」  と言うので、俺は仕方ないな、と心の中で呟いて本に栞を挟んだ。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加