彼との距離

１．

　コンビニの袋からよく冷えた缶ビールを取り出し渡してくれるので、
「サンキュー」
　とだけ言って受け取ると、早速缶を開けた。

「そういえば、二人だけで飲むのって初めてか？」
　一口飲んだ所で言われたのでちょっと記憶を辿ってみるが、確かにそうかもしれない。
　食事やどこかに行ったりするときも、 仲間や親しい友人たちがいて、二人きりで出かけたような記憶もない。
「いつも誰かしら周りにいるからな」
「賑やかなのは良いことだろ」
　ちょっと笑ったので、俺もつられて笑ってしまった。

「これだけ長く一緒に居るのにな」
「高校の頃からだから…何年だ？」
　 同室になったのは俺たちが高校の時で、後からこいつが入って来た。
　高校でも同じクラス、仕事先も一緒、同じ部屋で寝食を共にしてきたので、それなりに長い時間を共有してきたのに、二人きりで飲んだことが無いと言うのも不思議な話だ。
　親友だと言って良い間柄で、仲が悪いと言うわけでも無いのに。