彼との距離

１．

「昔の話だろ！」
「自分で振っといて、それ言うか」
「人間関係、最初最悪の方が後々うまくいくような気がする」
　ヤツはそう言うと、ビールを一口飲んだ。

　確かに、最初から好印象だと後で嫌な部分が見えた時に幻滅…なんてこともありえるわけだから、第一印象が悪い方が挽回できるかもしれない。

「お前と彼女も、最初最悪だったっけ。今のは経験談？」
　俺が言うと、ビールを吹き出しそうになってむせている。
「な、何だよ、急に」
　口元を手の甲で拭いながらも、顔は照れからか赤い。
　相変わらず恋愛に対しては超が付くほどウブな様子だ。

　最近になってこいつにも彼女が出来たので、そのことを引き合いに出したのだが、これ位で照れてるようではまだまだガキだ。