【第壱話 ある初夏の噂。少年は双子になったんだって…】

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【第壱話 ある初夏の噂。少年は双子になったんだって…】

ある晴れた日、小さな農村に住んでいる老夫婦がいました。 おじいさんは畑で農作業をしていたとき、目の前にまだ12歳くらいの少年がいました。 「おやおや…。どうかしたのかぃ?」 おじいさんは作業をやめ、問いかけました。 でも少年は俯いたまま何も答えません。 よく見ると、少年は真っ黒な髪に立派な洋服を着ていました。 おじいさんは不思議に思いました。 (こんな子供、村にいたかのぅ…) 小さな農村ゆえ、子供が生まれたときは農民一同で喜び合う村でした。 でも、ここ数年は子供が生まれたと聞いたことがありません。 それに、黒い髪など初めてみたのです。 誰一人として黒髪の人などいないというのに。 おじいさんはどこか別のところから来たのだろうと思い、家につれて帰りました。 「ばあさんや、少しいいかの?」 おばあさんは、部屋で編み物をしていました。 「はいはい…。何ですか?」 「少し不思議な少年をつれてきてのぅ…。少しの間、一緒に暮らしてもよいか?」 「おや。おじいさんもですか」 「もしや、お前もか?」 「えぇ。確かこちらに…。あぁ、いたいた。ちょっとおいで」 そういってつれてきた少年は…。 「はじめまして。××と申します」 どうみても、おじいさんがつれてきた少年でした。 おじいさんは驚きのあまり、腰を抜かしてしまいました。 「まぁまぁ。どうかしたんですか?」 「お、おぬしは…。わしが連れてきた少年じゃ」 「はい?××は数時間前からずっとここにいましたよ?」 「そ、そんなはずは・・・」 そういって振り返ると・・・。 おじいさんがつれてきたはずの少年は消えていました。
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