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めると「じい様……」
じい様「めると……お前には悪いことをした。あの時その、肩にその傷をつけてしまった。私は……お前たちに芸術家になることを押し付けてしまった。めると、お前は昔から優しかったな。めるにも、銀朱にも。その優しさなら医者になっても優秀だっただろうに、私がおまえの右手を壊した。ずっと、会って謝りたかった。でもどんな顔をしてめるとと向き合っていいか、分からなかったんだ。銀朱が謝る機会をくれた。すまなかった……!!」
めると「……じい様……。いいんです。もう、いいんです。夢は叶えられなかったけど、僕には大切な家族がいるんです。じい様も知っている通り翼裟や舞斗には両親がいなく、でも夢を叶えようと頑張ってる。僕が、この腕のせいにして夢を捨てたんだ。じい様のせいなんかじゃない。僕こそごめんなさい!!」
じい様「いや。私が、お前に芸術家の道を押し付けたんだ。めると、お前はなにも悪くない。」
めると「ちがうんだ……。じい様が僕にやった事はただのきっかけにすぎないんだ。僕は、この腕のせいにして夢を叶えることをやめたんだ。本当はこの腕でも医者になれた。でも僕は努力を怠った。叶えようと必死にならなかった……それだけなんだ。だからじい様が責任なんて感じなくていいんです。」
じい様「めると、やはりお前は優しいな。」
じい様は穏やかで優しい瞳で慈しむようにめるとくんを見つめていた。
めると「じい様……」
めるとくんは涙を流していた。
その涙はどんな人よりも綺麗な姿だった。
じい様との確執がなくなった今、めるとくんは自由だ。
俺は俺で北荻家として恥じないような未来を目指す。
そしていつか必ずめるとくんをも追い越せるような芸術家になってやるんだ。
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