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ただの思いつき、突発的なものじゃない。しっかりと対策がなされている。ニュースでよく見る愉快犯じゃない、これはーー
誰かが、なんらかの目的のために殺した。
何百という人を、死ぬ恐怖を与える暇をなく、さみしくないようにたくさんの仲間と一緒に、殺した。
「どうする?」
携帯が使えない今、ほかに連絡手段はないか。確か、大学にはパソコンが入っていたはずだが、どうだろう。私以外にも誰かしら携帯は持っているだろうが、死体を弄る勇気はない。
ならば、直接しかない。外に出て、この状況を誰かに伝えなくては。
早い方がいい。またテロリストが来るかもしれない。まだ恐怖らしい恐怖は芽生えてなかったが、焦りは汗となって感情を表した。
すぐここを離れなくては。根拠のない焦りは急き立て、講義室を飛び出した。
結果、間違いだった。
飛び出した直後。ヒトの気配がした。ヒトに飢えていた私は反射的に振り返った。階段を登り、ちょうど踊り場付近にいた人と目があった。この大学の生徒ではないな、とさっきは役に立たなかった直感が告げる。それはおそらく正しかった。
その人は私を見つけると、数瞬固まり、驚いたようだった。だが、それもすぐに溶解し、
「ーーーー」となにか叫ぶ。
「今行く」とか「大丈夫か」などといったニュアンスじゃなかった。攻撃的な口調であった。
その瞬間、その人の周りに”なにか現れた”。懐中電灯を向けられたような、丸い光が三つ。その人の周りをゆらゆらを浮いている。なにあれを思ったとき、三つの光から光の線が伸び、私の体に当たった。
額、喉、心臓。レーザーでしっかりと当てられたそれは銃口の照準をあわせるそれに似ていた。
避けなきゃ。体を右に大きくずらしても遅い。殺せるなにかが、私に向かって放たれた。
世界がスローモーションになる。これは走馬灯をみるようだ。手が廊下の反対、ガラス窓に触れる。窓を突き破って回避、なんてことはできない。ああ、これは死んだな。やっと恐怖が芽生えてきた。死にたくないな、まだ死にたくない。走馬灯が流れ出す。死を予知したように、死ぬ前に流れ出す。一番最初にみた走馬灯は、お母さんがいた。不思議なお母さんだった。走馬灯の中のお母さんもやっぱり変わっていた、漫画を手に取り、私に向ける。大好きな漫画。あの主役の能力はなんだっけ。確か、確か。そうだーーーー
「ば、バリアー!!」
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