一思想伝

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男性は噴き出すようにして笑う。「それにしても、バリアーとは幼稚だな。久しぶりに聞いた」 私も、数年ぶりに言った。 「バリアーで弾くとは、なんとまあ」 「…………」 赤面。 とっさだったとはいえ、なぜバリアだったなのだろう。 もっとかっこいいものを叫べば良かった。 殺してくれとは言わないが、殺して欲しい。 「……仕方ないでしょ。お母さんの影響よ」 とっさに出た走馬灯。その中に出てきたお母さんの会話。 『漫画はね、読んでおきなさい。いつかこういう主人公みたいなむちゃくちゃな状況になったとき、慌てないように。頭の中で使いたい能力を決めておくの』 決めておいた能力が、いくつかあったがその中の一つが、バリアーだっただけの話だ。 「だいたい、あんたこそ何者よ。テロリストにしてはファンタジーすぎる」 男性は鼻で嗤った。「漫画みたいだろ。こういうのって本当にあるんだぜ。能力ってやつが」 三つの光が強く輝きだす。発射の前兆のように思えた。またバリアーで、と思ったが。 「させねえよ」と、男性が光を操作した。私を中心に、正三角形を作るように並ぶ。 「そっちにガラスはないだろ」 その通り。 「覚醒直後に悪いが、ファンタジーはここまでだ。遊べなくて残念だったな、嬢ちゃん」 「じょ、嬢ちゃん? なにそれ。古臭い」 バリアーがダメなら、ほかの能力はないか。そもそも私の能力は本当にバリアなのか。頭を働かせようとするが、思考は前に進まない。
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