一思想伝

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「お世辞だよ。冥土の土産に受け取れや」 「いちいち表現が古臭い。それに、まだ、死にたくないのよね」 「運がなかったんだよ。神を恨みな」 「神様なんてくだらないってお母さんが言ってたわ」 「ほおー」 「『所詮、神様なんて人が産んだものの一つに過ぎない。だったら人のほうが偉いに決まってる。なのにどうして神様に頼らなくちゃいけないの?』むちゃくちゃが売りのお母さんの迷言の一つよ」 名言でなく、迷言。こういうときでないと、とてもじゃないと言葉にできない。 これで会話の糸口になってくれればと思ったが、予想外にも、その男性は困惑した表情を見せた。 「それ……お前のお袋がさんがいったのか?」 「そうよ。面白いでしょ」 「まさかと思うが、その人、アキナって名前じゃないか?」 今度は、私が困惑する番だった。確かに、私の母の名前はアキナだ。私の返事を待たずに、男性は続ける。 「商人の商って書いてアキナ。苗字は」 「音々夢。音々夢 商(ネネム アキナ)。それがお母さんの名前よ」 「……あんたの名前は」 「ココロ。試すって書いて、試(ココロ)」 「音々夢 試か」 光が、消えた。放たれたわけじゃない。消滅したのだ。男性が、射つ気をなくしたようだった。
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