一思想伝

15/43
前へ
/43ページ
次へ
「保留だ」 「は?」 「今は殺さないでおいてやる」 有難いことのはずなのに、腑に落ちない。 「どう……して?」 殺してくれと懇願していたように、訊いていた。 その人は言った。ひどくつまらなそうだった。 「お前が、あの人の子どもだからだ」 一瞬、意味がわからなかった。 「あの人って、お母さん?」 「そうだ。お前のお母さん。俺の直属の上司。正確にいえば、上司だった人。その人の娘だからだ」 「お母さんが?」 消化できないことが多すぎる。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加