24人が本棚に入れています
本棚に追加
「どういう意味?」
『ベッドから床に落ちるまでの時間って、どれくらいだと思う?』
「…………」
『僅かな時間よね。その僅かな間に、夢を作り変えるなんてできると思う?』
「できるんじゃないの? よくわからないけど」少しムキになって言い返す。お母さんはそんな私を見て優しく微笑んだ。
『そうね。実際にはわからないわね』
「そう、わからない」
『でもさ、お母さんが言ったほうが、面白いと思わない?』
まただ、と思った。『面白いと思わない?』はお母さんの口癖だった。
『予知が実際にあって、神様もいて魔法もあって。そして』
「漫画のような世界が実際にあって、でしょ。わかった、わかったから。確かにそのほうが面白いです」
『でしょ。だから、漫画を読みなさい。たくさん、この世にある漫画を全て読み尽くすぐらいの勢いを持ちなさい。そして考えるの。自分だったらどうするか、どんな能力が欲しいか。漫画に実際出てきた能力を真似をしてもいい。武器をアレンジしてもいい。とにかく考えるの。いつか、そういう日がくるかもしれないでしょ。異世界に飛ばされるような突拍子もない出来事が』
そんな日は絶対に来ない。来るわけない。私はそう思っていた。
でも、来た。
そんな日が来てしまった。異世界には飛ばされなかったけれど、突拍子もない出来事が起きてしまった。
お母さんは予知能力者なんじゃないかと思ってしまった。
言い当てたわけじゃないけれど、どこか予感をしていたんじゃないかと勘ぐってしまう。
普通に生活していたら、無理だろう。こんな状況を予感させるのは。
最初のコメントを投稿しよう!