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足音がしなくなったので、顔をあげてみる。わき腹のあたりを曲げて、さらに顔を高くする。カチャンと澄んだ音を立てて、私に乗っていたガラス片が床に落ちた。ガラス片は敷き詰められるように広がっていた別のガラス片に辺り、角が少し欠けた。欠けたガラスはリノリウムの床に落ちた。音はしなかった。
音がなくなり、静寂にいたたまれなくなる。立ち上がるためにと手をつこうとして、辞めた。床のガラスが目に入った。着いた途端、破片で手を切らないよう(といっても、全身細かな切り傷だらけで今更一つや二つ傷が増えようと大差なかったが)軽くのガラスを払う。チクチクした感触がしたが、幸いにも破片が刺さったり新たな切り傷を作ることはなかったようだ。
片腕をついて体を起こしたことで、ようやく講義室の現状が知れた。
ついさっきまで、ここは地学の講義を行っていた。
それが、地学の講義を行っていたのが嘘のような有様だった。
五分とたっていない過去の記憶が蘇る。今と照らし合わせ、間違いよりも正解が少ない、間違い探しが始まった。
マシンガンの乱射というのは、弾丸がモノの削るというより、破壊していくものらしい。
講義を受けるために設置されていた三人掛けのテーブル。三列掛ける六行のテーブル。動かないように、講義中に余計な音を立てないように固定されていたはずなのに、木が根から抜かれるように床から引き剥がされて吹き飛ばされている。椅子も同じように固定されていたのだが、テーブルよりも軽いせいか壊れ方が酷い。まだテーブルはテーブルらしさが残っていたが、こちらは片鱗すら匂わせてくれない。もはやプラスチック片としか呼べないのではないか。
六枚あった窓ガラスは全て割られ、枠に残っているガラスも景色にヒビを入れている。風が吹いただけで砂のように崩れそうだ。元は一枚だったガラス窓は無数の細かい破片となり、講義室をまきびしを蒔いたように床を覆っている。
唯一原型を保っているのは前にある黒板で、それでも弾丸がめりこんでしまっていて本来の使い方はもうできないだろう。弾丸は天井まで破壊し、蛍光灯はあった跡ごと削られ、無かったことになっている。めり込んだは弾丸は天井を剥がし、なにかのコードが見え隠れしていた。
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