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この光景を見て、口にした言葉に、私が一番驚いた。悲鳴でもなく、泣くでもなく、感心。
私はこんなに心が冷たかった女だっただろうか。それとも、弾丸は私の感情を粉々に撃ち抜いてしまったのだろうか。
微塵も残してくれなかったから、ここまで突き抜けられる。どこか残っていたら、きっと、本当に壊れてしまったはずだ。目に見えないところで。治る余地など残さずに。ぐちゃぐちゃに、べちゃべちゃに、くちゃくちゃに。
今の私があるのは、先に壊されてしまったからだ。ズタズタに、バラバラに、ベキベキに。
有難いほど迷惑な話だ。
深呼吸。
「にしても」散らばる死体を見て、どこか違和感を覚えた。
大量の死体を見て違和感もなにもないのだが、どうも腑に落ちない。
「……そうか。”逃げたようすがないんだ”」
学内を埋め尽くす死体。そのどれもが一定の感覚を保って死んでいるように見える。まるでパーソナルスペースを保っているかのようだ。一人が撃たれたならまだしも、これだけの人が撃たれているのだ。多少のタイムラグがあったのではないか。だったら、少しでも逃げようとするのはず。
それがないのは、一度に殺されたからだ。一度に全員を殺したからだ。
誰かの死を見る前に、自分が死んだ。逃げれるはずがない。逃げる必要性すら感じなかったのだから。
死体の数は百はある。これを一度に殺すには、何人の狙撃手がいるだろう。マシンガンは使われていないはずだ。周りの建造物は壊れていないし、木も削れていない。人だけを狙っている。人のみが殺されている。
芸術的に、残酷だ。
「そうだ……警察!!」
殺人事件が起きている。警察に通報しなくては。
幸い、携帯はポケットの中。破壊されていない。
警察ってなんばんだっけ。そんなことを思い出しながら携帯を開くと「うそ、県外?」
そんなはずがない。昨日の講義ではアンテナがしっかりたっていた。それがなぜ?
まさかと思って電話をかけてみるが、県外は県外だった。メールも送れなかった。掲示板に書き込みもできなかった。使えない。
「あの……テロリストたちが?」考えられる可能性はそれしかない。
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