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併し、その前に私は、姉の正体を、姉が一体果して、尋常な路傍の草花売りであるか否かをたしかめたかった。この頃になって気がついた事だが、姉の草花を入れる小さな籠に一輪の花はおろか枯れ葉や花の匂も、ただの一度だって、そこに花なぞの入っていたらしい形跡をみとめ得たためしはなかった。それにそんな籠一杯の花の数が、私達二人の生活を支えるのには、あまりに少なすぎることをも理解するようになったし、私は姉の商売をしているところを見届ける必要があると切実に感じた。
暮方近くになって、姉が眼をさました時に私は姉にたずねた。
――姉さんは、何処で商売するのですか?」
姉は、明かにギクリとしたらしかったが、つとめて平静を装って、窓から遙かの夕焼雲の下にそびえ重さなる街をゆびさした。
――アノ、ニギヤカナ、マチデサ。」
――ほんとですか。姉さんの花を売るところを僕に見せて下さい。」
姉は、すると、いよいようろたえた様子であった。
――バカ! オマエハ、ウチデ、オトナシク、ルスバンヲシテイレバ、ソレデ、イイノダヨ。」
――僕は、いつかしら、屹度姉さんに知れないように、跡をつけて行ってしまいますよ。」と私は云った。
姉は顔色を変えて唸った。そして劇しく、上下に首をふって、泣きじゃくった。
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