可哀想な姉

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 2  到頭、或る日姉は私が本当の大人になってしまったことを覚った。  遊び友達のない私は、家の裏の木に登って、遠くの雲の中に聳え重なっている街を見ていた。すると姉は私の足をひっぱって、私を木から下ろしてしまった。  姉は私のはいている小さな半ズボンをたくし上げた。  姉はさて悲しい顔をして首を縦に振ってうなずいた。  姉が首を縦に振ってうなずく場合には、我々普通の人間が首を横に振って、いやいやを、するのと同じ意味なのであった。彼女の愚な父と母とは、ひょっと誤って、幼い彼女にそんなアベコベを教えてしまったのだ。不具者のもちまえで、彼女は頑に、親の教えた過ちを信じて改めなかった。  姉は幾度も私の脛を撫ぜて、幾度も首を縦に振った。  ――姉さん。どうしたの?」と私は訊ねた。  姉は長い間に、私と姉との仲だけに通じるようになった。精巧な手真似で答えた。  ――ワタクシ、オマエガ、キライダ!」  ――なぜです?」  ――オマエハ、モウ、ソレヨリ、オオキクナッテハ、イケマセンヨ。」  ――なぜです?」  ――ワクシハ、オマエト、イッショニ、クラスコトガ、デキナクナルモノ。」  ――なぜです?」
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