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二
僕達は大きな銀杏(いちょう)の木を目当にお寺に行った。白と茶斑の犬はジャレながらついて来た。
見上げるような大きい太い銀杏は墓場を仕切っている土塀(どべい)の傍に突立っていた。土塀は大方崩れかかっていた。墓場から少し離れた所に本堂があった。本堂は可成(かなり)大きくて、廻りがずっと空いていた。本堂は随分古びていたけれども、中々しっかりしていた。前側の階段にはキラキラと日が当っていた。あたりには誰もいなかった。
森君は階段を上って、お堂の中を覗(のぞ)き込んで、廻郎を歩き廻って下へ降りて、今度はお堂の廻りをグルグル歩き初めた。さっきからついて来た二匹の犬は、馴(な)れた場所だと見えて、大はしゃぎで、飛びついたり一緒に転んだり、追い駆け廻したりしていたが、そのうちに一匹が勢(いきおい)よくお堂の下に飛込むと、後の一匹がその後を追って縁の下に消えた。暫くすると、二匹が又勢よく飛出してきた。
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