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「とりあえず、これで車の心配はなくなったな。」
狭い軽四に四人で乗り込み、山を出る。
あのワゴン車は放置した。
あの車、このデブの車ではなくレンタカーらしい。
それも、自殺のために使うので偽名で借りたらしく、そこから足がつくことはない。
タイミングがよかったのか悪かったのか、お陰で俺たちは完全犯罪に成功してしまったのだった。
「駅の近くで下ろすから、そこから帰ってくれ。
車は借りてくが、お前のせいであのワゴン車が使えなくなったのだから文句は言わせないぞ。」
と、デブがハンドルを操作しながら言った。
そうか、俺はもう目的も達成したし、こいつらと一緒にいる必要はないんだな。
「で、俺を下ろしてお前らはどうするんだ?」
「どうするもこうするも。
KSBは自殺サークル。
集まってやることなんて一つしかないだろ。」
デブは俺の方は見ず、まっすぐ前を見たままそう言った。
後ろを見ると、パッツンは手を膝の上において俯き、シュバルツは不機嫌そうに外を見ている。
「お前らさあ。
やっぱり自殺はよくないよ。」
「………。」
無視、か。
そりゃそうだ。
こいつらにはこいつらの事情があるのだから、俺が言ったところで簡単に聞くはずがない。
「……よし、わかった。」
俺は着けていなかったシートベルトを着け、言う。
「お前らの自殺旅行。
俺も一緒について行く。」
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