旅は道連れ世は情け

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「はあ!? 何を言ってるんだ!?」 「だから、俺もお前らについて行くって言ってんの。」 「それって、あなたも一緒に自殺するってことですか?」 「それは、しない。 ただ、ついて行くだけだ。 大丈夫、自殺を止めろとかは言わないからさ。」 「無理だ!! ただでさえ、お前のせいでプランが狂ってるんだぞ!!」 デブがハンドルを持ったまま俺を向いて怒鳴るので、車はふらふらと蛇行する。 「そ、そんな怒ることないだろ。 ほら、ちゃんと前見て。」 俺が言うと、デブは慌てて前を向き直すが、怒りはおさまっていないようだ。 「とにかく、無理なものは無理だ。 お前は駅で降りろ、いいな。」 「なんでそこまで頑ななんだよ……。 そもそも、プランって何だよ?」 「……死ぬ前にやりたいこと。」 と、後ろでパッツンが言った。 「それを叶えるための旅なんです。」 「死ぬ前にやりたいこと、ね……。」 なるほどな。 「それで、そのお前たちのやりたいことって、なんだ?」 「温泉旅行、です。」 「温泉旅行?」 呆気に取られた。 もっとこう、テロみたいなことでも言い出すのかと思っていたが……。 「温泉旅行でいいのか? 最後にやることが?」 「温泉旅行がいいんです。 おかしいかもしれませんが、それが私たちの夢だったんです。」 パッツンは、少し恥ずかしそうにそう言った。
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