旅は道連れ世は情け

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車は俺たちを乗せ、高速道路をしばらく進む。 暖かい日差しのせいで眠くなってきた。 後ろを見ると、ナナは熱心に本を読み、シュバルツは窓にもたれかかって眠っている。 「なんか、ぬるいなあ……。」 銀行強盗と自殺志願者を乗せた車とは思えない。 「なあ、温泉旅行ってことは旅館に泊まるんだろ? どこの旅館で何泊するんだ?」 「それほど遠くはないから夜には着く。 予定は二泊だ。 それからお前、自分の宿泊費は自分で払えよ。」 「わかってるって。 金はあるんだから。」 ポケットに入れた札束を触る。 さっき数えたら、70万円近くあった。 旅館で二泊して、たまっていた家賃やら水道代やらを払ってもお釣りが来るほどだ。 「今、何時だ?」 ポルコに聞かれて、俺は腕時計をしていないことに気がついた。 「わかんね。 パッツン、わかるか?」 「…………。」 「おい、パッツン!!」 「は、はい!?」 ナナは驚き顔を上げる。 その拍子に、読んでいた本が落ちた。 「今、何時かわかる?」 「えっと、四時過ぎですね。」 可愛らしいピンクの腕時計を確認し、ナナはそう言った。 「四時過ぎ、か……。」 呟いて、ポルコはハンドルを切る。 「どこ行くんだ?」 「サービスエリアだ。 少し早いが、飯にしよう。」 「向こうで食えないのか?」 「夕食の時間には間に合わない。 お前のせいでな。」 「……すみません。」 怒ってるよ……。 肩身が狭い……。 サービスエリアについて車から降りられることだけが救いだった。
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