旅は道連れ世は情け

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サービスエリアを出て、車は再び走り出す。 シュバルツがゆっくり眠りたいと言うので助手席に座らせ、俺が後部座席へ座った。 相変わらず、シュバルツは寝息を立て、ナナはまた熱心に本を読んでいる。 大してやることなんてなかったので、サービスエリアで買ったポッキーを食べながらナナをぼんやりと見つめていると 「な、なんですか?」 俺の視線に気づき、ナナが言った。 「いや、別に……。 ずっと本ばかり読んでるからさ。」 「あ、えっと……。 すみません。」 そう言ってナナは申し訳なさそうに本を閉じる。 「ああ、いいよ読んでて。」 「いえ、別にいいです。 もう何度も読んだ本ですから。」 「あ、そう。 ポッキー食べる?」 「えっと、はい、いただきます……。」 俺がポッキーの箱を差し出すと、ナナは遠慮がちに一本抜き取って口に運ぶ。 「俺には本の良さはわかんねぇなあ……。 昔から、あんまり文字を読むのは好きじゃなかったんだよなあ。」 おかげでアホまっしぐらだ。 「本は、開くだけでいろんな世界に連れて行ってくれますから……。」 閉じた本の表紙を指でなぞりながら、ナナは言う。 「山奥の小さな村だったり、なんてことない普通の町だったり。 今まで誰も行ったことのないような宇宙の果てでも、本は連れて行ってくれます。」 「へぇ……。 なんか、どこでもドアみたいだな。」 「ふふ、そうですね。」 「だけどさ、やっぱりそういうのはなんか違うんだよなあ。」 俺が言うと、ナナは顔を上げて俺を見る。 「やっぱり、さ。 そういうのは自分の目で見ないと。 山奥の小さな村も、なんてことない町の景色も。 宇宙はさすがに無理かもしれないけどな。」 俺は、そう思うけどな。 そう言うとナナは小さくひとこと 「……うらやましいな。」 と、言った。
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