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気持ちいいなあ……。
ぼんやりとした暖かい光の中で、俺の体はふわふわと浮いているみたいだ。
懐かしい暖かさに包まれ、俺はたぶん眠っているのだろう。
「……さん……後藤さん…。」
遠くから俺を呼ぶ声が聞こえる。
俺は眠いんだよ……。
もう少し寝かしてくれよ……。
無視していると、声は徐々に近づいて……
「おい!!」
「っ!?」
急に野太い声が聞こえ、俺は慌てて飛び起きる。
目を開けると、俺の顔を覗きこんでいるポルコと目があった。
顔が近いんだよ、気持ち悪い。
「やっと起きたか。」
俺が起きたのを確認し、ポルコは車を降りる。
見ると、ナナとシュバルツの二人もすでに車の外だ。
俺が眠っている間にずいぶんと時間が経ってしまったらしく、辺りはすでに暗くなっていた。
俺が見ていた暖かい光は、駐車場の街灯の光だったようだ。
「さあ、行くぞ。
予定よりずいぶん遅れてしまった。」
早足で歩くポルコに続いて、俺たちも砂利道を歩く。
どこからか風に乗って、賑やかな祭り囃子が聞こえてくる。
「なにかやってるんですかね?」
「祭りでもやってるんだろう。
ここらは温泉街として栄えてるみたいだからな。」
「お祭り、ですか……。」
「また、時間があれば行ってみようか。」
「はい、楽しみですね。」
ナナとポルコの話す声と、砂利を踏んで歩く音を少し後ろから聞いていると、どこか懐かしい気がした。
ずっと昔、こんな風に暗い道を誰かと歩いた気がする。
あれは、誰だったろうか……。
俺はどこに行こうとしていたんだろうか……。
「どうかしたのか、愚民。」
俺より後ろを歩いていたシュバルツがそんなことを言ってきた。
「どうもしてねぇよ、シュバルツ・エッセンシャル。」
「エッセングルダスだ。」
「どっちでもいいよ。」
お前、ただのニートじゃねぇか。
話しながら歩いていると、少し先にぼんやりと灯りが見えた。
小さな旅館が、そこにあった。
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