旅は道連れ世は情け

18/48
前へ
/50ページ
次へ
気持ちいいなあ……。 ぼんやりとした暖かい光の中で、俺の体はふわふわと浮いているみたいだ。 懐かしい暖かさに包まれ、俺はたぶん眠っているのだろう。 「……さん……後藤さん…。」 遠くから俺を呼ぶ声が聞こえる。 俺は眠いんだよ……。 もう少し寝かしてくれよ……。 無視していると、声は徐々に近づいて…… 「おい!!」 「っ!?」 急に野太い声が聞こえ、俺は慌てて飛び起きる。 目を開けると、俺の顔を覗きこんでいるポルコと目があった。 顔が近いんだよ、気持ち悪い。 「やっと起きたか。」 俺が起きたのを確認し、ポルコは車を降りる。 見ると、ナナとシュバルツの二人もすでに車の外だ。 俺が眠っている間にずいぶんと時間が経ってしまったらしく、辺りはすでに暗くなっていた。 俺が見ていた暖かい光は、駐車場の街灯の光だったようだ。 「さあ、行くぞ。 予定よりずいぶん遅れてしまった。」 早足で歩くポルコに続いて、俺たちも砂利道を歩く。 どこからか風に乗って、賑やかな祭り囃子が聞こえてくる。 「なにかやってるんですかね?」 「祭りでもやってるんだろう。 ここらは温泉街として栄えてるみたいだからな。」 「お祭り、ですか……。」 「また、時間があれば行ってみようか。」 「はい、楽しみですね。」 ナナとポルコの話す声と、砂利を踏んで歩く音を少し後ろから聞いていると、どこか懐かしい気がした。 ずっと昔、こんな風に暗い道を誰かと歩いた気がする。 あれは、誰だったろうか……。 俺はどこに行こうとしていたんだろうか……。 「どうかしたのか、愚民。」 俺より後ろを歩いていたシュバルツがそんなことを言ってきた。 「どうもしてねぇよ、シュバルツ・エッセンシャル。」 「エッセングルダスだ。」 「どっちでもいいよ。」 お前、ただのニートじゃねぇか。 話しながら歩いていると、少し先にぼんやりと灯りが見えた。 小さな旅館が、そこにあった。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加