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水道が止まった。
五月
世間はゴールデンウィークとやらで賑わっているらしい。
正式には大型連休と呼ぶらしいが、そんなことはどうでもいい。
水道が止まった。
ついでに言うと、電気も止まった。
先月はガス。
そのずっと前から、滞納中の税金の催促が来ている。
こっちはその日の飯もあるかわからない状況だってのに、どうして国に金を払わないといけないんだ。
キッチンの棚の奥にあった、いつのものかもわからない湿気たスナック菓子を食べながら、預金通帳を見る。
「28円……。」
28。
何度見ても、その数字は変わらない。
俺、後藤喜一郎。
この世に生を受け、27年と7ヶ月。
頭は悪いがそれなりに努力をして、それなりの大学に入り、それなりの企業に就職し、それなりに恋愛もしたし、それなりに世の中の酸いも甘いも経験してきた。
会社が突然の経営不振に陥り、倒産したのが運の尽き。
色々な仕事を転々としたがどれも長続きせず。
貯金をほとんどしてこなかったことも重なり、今に至る。
全財産28円。
家賃と税金滞納中。
電気ガス水道も止められた。
そして……。
「後藤さーん。
そろそろ借した金、返してくれまへんかねぇ。」
借金、100万円。
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