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ワゴン車は大通りを抜け、国道へ出る。
警察が追って来る気配は無さそうだ。
「どこへ行けばいい?」
「どこへ……。
そうだな、どっか落ち着ける場所がいいな。」
俺はマスクとを脱ぎながら言う。
「人通りが少ない場所がいいな。
山奥とか、さ。」
「そんなアバウトな……。
だいたい、あんた何者なんだ?
いきなり人の車に乗り込んで来て。」
「何者、何者ね……。」
俺は鞄を開き、中身をデブに見せる。
「な、どうしたんだその金!!」
「……お、お金持ちの方なんですか?」
「バカか。
あの覆面にしろ、追われてたことにしろ、明らかに強盗だろ。」
「メガネ、正解!!」
俺が指差して言うと、メガネは満足そうにメガネを上げる。
「強盗だと!!
どうするんだよ、これじゃ私たちまで共犯じゃないか!!」
「シュバルツさん、知ってたんですか?」
「覆面で包丁と鞄を持った男は誰がどう見ても強盗だろ。」
「ちょ、ちょっと待て。」
今の会話、一つひっかかる。
「シュバルツって、誰よ?」
「僕だ。」
胸を張ってそう言ったのはメガネだ。
「え、なにお前、外人なの?」
「違いますよ。
シュバルツさんって言うのは、ハンドルネームなんです。」
「ハンドルネーム?」
「そう、サイト内での僕のハンドルネームだ。
ま、僕の中ではこっちが本名みたいなものだけどな。」
なに言ってんだこいつ。
「サイトって、インターネットのサイトか?」
「今運転している彼が創設したサイトだ。
名前は"KSB"。」
「ローカルのテレビ局みたいな名前だな。
何の略なんだ?」
「K=クソッタレ
S=世界を
B=ぶっ壊せ。」
だっせぇ……。
おかしいだろ。
デブのセンスも、そんなサイトに参加するこいつらも。
「で、何のサイトなんだ?」
「………。」
俺が聞くと、メガネとパッツンは黙る。
しばらくの沈黙の後、デブが答えた。
「……自殺サイトだ。」
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