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その後、俺と自殺サークル"KSB"メンバーを乗せたワゴン車は近くの山へ入った。
いつから鋪装されていないのか、コンクリートを突き破って草が生い茂る道を進み、頂上の開けた場所で車は停車した。
ちなみに、そこへたどり着く間車内は沈黙。
「………。」
たどり着いてからも、沈黙。
停車したワゴン車の座席に無言で座る銀行強盗と三人の自殺志願者。
なんとも珍しい光景だ。
「なんていうか、さ。
自殺はダメだよ、自殺は。」
沈黙に堪えきれず俺が言うと
「犯罪よりはましです。」
と、パッツンに返された。
ごもっともである。
返す言葉もない。
再び沈黙に包まれた車内。
カーラジオの時報が14時を告げる。
「それでは午後のニュースです。
今日、12時頃に都内の銀行に銀行強盗を名乗る男が侵入。
包丁で職員を脅し、現金800万円を奪い逃走したとのことです。」
何の気なしに耳を傾けていたカーラジオから、そんな声が流れた。
「あ……。」
「これって……。」
「犯人はレスラーのような覆面で顔を隠しており、手には鍋つかみのような物を着けていたとのことです。」
「はは、バカな犯人だなー。」
一人、笑った俺に、三人は無表情な顔を向ける。
「……すみません、私です。」
「いや、それはわかっているが。」
「本当に、強盗犯だったんですね……。」
「ええ、まあ、はい……。」
さっきまで実感はなかったが、カーラジオを聞いた途端、強盗犯という言葉が重く乗しかかった。
「強盗の、後藤です。」
居心地が悪くなって、かしこまった口調になってしまったが、期せずしてそれが駄洒落のようになってしまい、自分で小さく吹き出した。
また冷たい視線が向けられ、俺は謝る。
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