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その数日後の事だった。
名前を呼ばれた少年が、突然姿を消したのだ。
大人も子供も総出で少年を探したが、一向にみつからない。
そして皆は少年が言っていたことを思い出した。
『あのね?学校の裏の峠でね?誰かが僕の名前を呼ぶんだ。』
「子呼び峠…」
誰かが呟いた。
静まり返った夏休み間近の教室に、セミの声がこだまする。
子供を呼ぶ峠、子呼び峠…。
懐かしい怪談が、皆の頭を過った…。
「あの子は『子呼び峠』に呼ばれたんじゃないの…?」
教師がそう呟くと、周囲の大人たちにまるで伝染していくかのようにそれぞれの記憶を呼び起こしてゆく。
大人たちはすぐさま子呼び峠に行き少年を探したが、どこにも少年の姿はなかった。
そしてただ…
少年の鞄だけが、薄暗いトンネルの真ん中に残されていた。
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