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臭く、澱んでいた。これではクモの巣の方が幾分マシか分からない。
僕らは何を血迷ったのか巨大な下水道を行軍していた。円筒型の道は遠くなるほど狭く見え、まるで僕らをそのまま飲み込んですり潰そうとするようだった。
膝下くらいまである水位も気にせず、ぴちゃぴちゃと進んでいく先輩に声をかける。
「本当にこんなところにルーシャスはいるんですか?」
男の名前はルーシャス・コスナー。衝撃波を操る蛇足の保持者らしい。齢五十六。彼が蛇足に目覚めたのは十二のことらしいから四十四年間じっと模範的に過ごしてきたわけだ。それが今になって何故今更。
「彼の仕事はもともと技術者、研究者寄りのね。ここ数年彼は軍部関係者と連絡を持っていた。恐らく何か新しい兵器の開発を画策してたんだろうね。しかし、軍は彼の援助を打ち切った。それを伝えに行った武官が殺されたってね。もみ消しは大変だろう」
「それとここに来る意味は……」
「ああ、彼は開発したものをここに密かに運び込んだらしい。援助を打ち切られたとなれば勿論開発したものも軍の物になる。それが気に入らなかったんだろうね。わかるよ」
「……わかるんですか」
「私がクモの巣にいるのと同じ理由だろうさ。そして君を引き抜いたのとも、たぶんな」
少しの間、沈黙が支配した。
異常に巨大化した鼠が目の前を走り抜けた。都市とかそういう栄養が足りてる場所では鼠とかの害獣が巨大化するらしい。
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