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「……それで、ルーシャスが開発していたものはなんなんですか?」
「ああ、それは……」
と彼女が口を開いた瞬間、どうんと低く重苦しい音が響いて地面が揺れた。
ジャルメナとかでは地震が頻発するらしいが、この国の、しかも王都で起こるなんてことはありえない。
「一体……」
その瞬間、下水道の煉瓦壁を破壊して僕の背丈二つ分はあろうかという化物が進路に飛び込んできた。
いや、化物ではない。機械だ。鉄と鋼で出来た化物だった。
その頭部にはルーシャスが座って何やら機関車のように操作している。
「思わぬ邪魔が入ったがさっきの続きを言うと、あいつが発明していたのは、蒸気機関を使った巨大な土木工作機械だ」
「もっと早く言えって!」
まるで伝説上の一つ目の巨人を縦に押し潰したようなその形状に、これが土木用ではなく殺戮用に造られたのではないかと直感的に思った。
「死ねええぁ!」
機械は右の腕を僕ら目掛け振り下ろした。散開してそれを避ける。
水を割って汚い飛沫がかかって顔をしかめる。
とりあえずはあの機械を破壊しなくては敵わない。水が満載なので電撃系魔法や火炎系魔法を使うことはできない。ここは無難に爆発魔法か圧縮魔法だろう。
僕は詠唱を開始する。
何の因果か僕は詠唱破棄することができない身体だった。代わりに全て詠唱すればどんなに魔力を必要とする魔法でも使うことができる。何度この性質に助けられ、また苦しめられたか分からなかった。
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