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僕はそっと目を開いた。
目の前にあったのは彼女の後姿で、この時かもしれない。僕が一生彼女の後を追い続けるんだと確信したのは。
彼女は機械の化物に向かって手を伸ばしていて、機械はその手前で動きを止めていた。
「話し忘れてたけど一応私も保持者でね。能力はこれだ」
そう言った彼女はどこか笑っているようで、今日という一日を僕を驚かすことに費やすと決めたようだった。
機械がめきめきと音を立てて動き出す。左腕をまるで引っこ抜くようにして、化物は尻もちをついた。
「しかし作用できる範囲はあんまり広くなくてね」
彼女の前でばらばらと機械の左手が砕け落ちる。つまり先輩が止めていたのは機械の左手だけで、化物はそのせいで動けなかったのを無理矢理動かしたら左手が引っこ抜けたということだろう。
「生きてるな」
「はい」
「重畳、重畳。コモン君がなすべきことはただ一つ。最上のタイミングで最上の魔法をあいつにぶつけることだ」
「はいっ!」
「私はあの機械の動きを止めるんでね、よろしく」
そう言うと先輩はだっと化物に向かって走り出した。立ち上がった化物はすでに先のなくなった左腕を彼女に向かって突き出す。しかし、勿論その動きは手前で止まり、彼女はその腕に飛び乗ると、次々とその動きを停止させ肩まで登りつめた。
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