第一章 油路地の変…

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それから俺達は病院に着き、総次はそのままベットに乗せられ手術室に入っていった…。 あきらかに総次は吐血をしていた…。 しかも尋常ではない量の吐血を… 俺はそれからすぐに『池田屋事件』の事を思いだした…。 そういえば『池田屋』に俺が乗り込んだ時、総次は血だらけで倒れていた…。 あの時もさっきと同じように青い顔をしていた…。 総次は敵の返り血でシャツに血がついていると言っていたが、よく考えてみれば、あれは総次の吐血だったのかもしれない…。 だとしたら総次はいつから吐血をしていた? あれが初めてだったのだとしたら総次のあの落ち着き方もおかしい…。 もし、それ以前から吐血をしていたのだとしたら一体どれぐらい日にちが経っているのだろうか…? もし… 病気で吐血しているのであればかなり進行していると見ていい…。 もしかしたら命に関わるんじゃないか… と俺の頭の中では悪い発想しかでてこなかった…。 俺は総次の手術を待っている間、局長に連絡すべきか悩んでいた時… 総次が入った手術室のランプが消え、先生達が数人出てきた…。 先生は俺の方に歩いてきて、 「付き添いの方ですね。 失礼ですが患者さんとはどういった関係で?」 と聞いてきたので俺は思わず… 「…兄です。」 と咄嗟に答えてしまった。 先生は暫く、俺を見ていたが、つけていたマスクを外し… 「…患者さんはとりあえず今回は一命を取り戻しました。 だが、次はどうなるかは正直分かりません…。 それほど病気は進行しており、手のうちどころがないと言った方がいいでしょう…。」 俺は先生が何を言っているのか理解できず、再度先生に聞き直した…。 「それは…? 一体どういった事なんでしょう? 今の話からして総次は近々死ぬと聞こえているように思えるのですが…。」 すると先生は、驚いた表情で… 「…お兄さんは知らなかったのですか?」 と言った。 俺はどうも、嫌な予感がしていたが… 「な…何をですか?」 と再び先生にそう聞き返すと… 「…患者さんのプライベートな事ですが、ご兄弟であるのであればお話しますね。 弟さんは肺癌です。 しかもすでに背骨の方まで転移しており、今の医学では助からない所まできております…。」 と無念そうに言った。 総次が癌?  
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