愛する人

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1週間前にね、 『うん。』 夜中に携帯が鳴ったの。 『うん。』 あなたの番号だったから、出たの。 『うん。』 でもね、あなたの声じゃなかった。 『……。』 あなたの友達の、ほら、けいくんとかいう人、あの人だったの。 『それ、1週間前じゃない。もう2カ月も前だよ。』 病院に来いって言うから、どうしてって聞いた。 でも、いいから来いって言って、電話が切れたの。 『あいつ、言葉が乱暴なとこあるからな。』 行くもんかって思ったけど、タクシーで病院に行った。 そしたらあなたが寝ていたの。白い布をかけられて、刑事ドラマの被害者みたいに。 『うん。』 なんの冗談かと思って、怒ったの。 けいくん、これはふざけすぎだよって。 そしたら、みんな哀れな目で私を見るの。 『…うん。』 落ち着いて、今は取り敢えず落ち着いて。そんなことばっかり言うの。 あたしは落ち着いてるのに。 『……。』 あなたにも怒ったの。こんなことして、驚かせたいのって。馬鹿らしいって言ってやった。 『お前が怒ると恐いからな。』 でもね、あなたは何も言い返してこなかった。 『うん。』 だからね、先に家に帰ったの。 『お前は馬鹿だからな。』 だって、本当に腹がたったから。
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