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おばぁちゃん。
『なぁに?』
今日ね、指輪つけてみたの。
『あら、ほんとだ。』
サイズがぴったりで、すごくキレイだね。
『そうね。似合ってる。』
今ね、彼氏がいるの。
『あらま。』
おばぁちゃんだったら、なんて言うかな?
やめときなさいって言うかな?
いい男じゃないって、笑ってくれるかな?
あたしは、いい男だと思うんだ。
おばぁちゃん。
『なぁに?』
おばぁちゃんに教えてもらった肉じゃがは、もう完璧に覚えたよ。
『あら、白滝忘れちゃだめよ?』
でもね、どうしても、鯖の味噌煮が上手にできないの。
『なんでかね?お砂糖入れすぎなんじゃない?』
もう1回だけ、作ってほしいな。
『……。』
おばぁちゃん。
『なぁに?』
おばぁちゃんのような人間になりたい。
『まぁ、どうして?』
ずっと、言いたかった。
おばぁちゃん、ありがとう。
『……。』
産まれてきてよかったと、言ってくれてありがとう。
どんなに醜い心も、全て受け止めてくれてありがとう。
おばぁちゃんにもう一度会いたいとは言いません。
だって、もし今会えたとしても、きっと私は弱音を吐くに違いないから。
今なら分かる。おばぁちゃんが、どれほど苦しんでいたのかを。
苦しい中で、ずっと笑顔を絶やさないその心の強さを。
きっと、天国にいると信じています。
この汚れた世界なんかより、ずっとずっとおばぁちゃんにふさわしいところにいるって信じています。
あたしは、おばぁちゃんに愛されてこれからも生きていきます。
-end
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