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駅を出ると、いきつけのコーヒーショップに入った。
店内にはあまり人はおらず、しっとりとしたジャズが流れていた。
角のスペースに座り、コーヒーを二つ頼む。
その間、女は始終沈黙していた。
「――相談ていうのは?」
中々口火を切らない相手に、俺のほうが痺れを切らした。
女はとまどいながら
「会いたい人が…いるんです」
ウエイターが置いたコーヒーを、女の話に聞き入りながら口に運んだ。
「会社の上司で…あ、一応恋人なんですが…同じプロジェクトチームだった人で…、今会えなくて、えっと」
カップを置き、女の視線を捕まえ、
「落ち着いてください」
うつむいたままだった女は、そのまま、また涙を流していた。
ひどく情緒不安定だな。この鬱状態をどれぐらい続けきたんだ?
カウンターへホットミルクを追加注文する。
「ゆっくり、落ち着いて話して。勝手に帰ったりしませんから」
女は、顔を手で覆いながら、何度も頷き返した。
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