第五章

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「お姉ちゃん、ところで話ってなに?」 由衣が切り出すと、美和子と同時に茂の表情が強張った。 今まで気づかなかった時計の音が、やたらと大きく鼓膜を揺らす。 住宅街の夜はそれこそ無音で、茂が唾液を飲み込む音までが鮮明に聞き取れた。 「実はね、由衣に……いえ、二人に見てもらいたいものがあるの」 由衣と智樹が顔を見合わせる横で、美和子は立ち上がった。 「一緒に来てくれる?」 玄関に向かい、階段の電気をつける。 「ちょっと待って」由衣が足を止めた。 「どうしたんだ? 具合でも悪いのか?」 小刻みに震えている身体を由衣は自ら抱きしめた。 「ごめん……何でもない」 震えを抑えようとする由衣に美和子は言った。 「由衣も……見たのね?」 由衣はグッと手を握り締めて顔を上げた。 「大丈夫、行きましょう」 階段に足を掛けると普段なら気にもならないギィという音が、今日はとても鋭く足の裏に刺さるような気がする。 照明がついているにも関わらず、階段の隅や、天井と壁の境がやけに暗く感じる。 階段を上りきって美和子が向かった先は、由衣の思惑通り志保里の部屋だった。
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