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暗闇の中で立ち尽くす三人。
ギギギギギ……
背後でドアがわずかに開き、隙間から光が差し込んだのと同時に、窓からじっとりと重たい空気が流れ込んでくるのを美和子は感じた。
あの時と同じだ、志保里が死んだ時に感じた空気だ。
差し込むわずかな光を頼りに、美和子は智樹の手を見つけると両手で握りしめた。そしてすぐに由衣の手を探し当て、壁際へ引き倒す。
強引に引っ張られた二人の身体は、滑るように壁へ打ち付けられた。
「なによお姉ちゃん! いったいなんなのよ!?」
「……に…げ……て……」
「お姉ちゃん!? どこにいるの!?」
智樹は由衣の手を探り当てて掴むと、強引に引っ張って光の筋を目指した。
ダン!とドアを蹴り飛ばすと、廊下の光が部屋の中を照らし出した。
まるで迷子になった幼い少女が母親を探すような、か細く、弱々しい声。
「お姉ちゃんは?……お姉ちゃんはどこにいるの?」
暗い部屋の奥で、静かにカーテンだけが揺れていた。
「ねえ!! どこにいるのよ!!」
廊下で崩れ落ちる由衣の視界には、美和子の姿はどこにも映らなかった。
床板にしがみつくように泣く由衣を、智樹は有りったけの力で抱きしめた。
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